第66章 【烏と狐といろいろの話 その7】
「ままコちゃんの体操着姿はどないです。」
「サムっ。」
侑が抗議の声を上げる。
「その写真だけは内緒にしたかったのにっ。」
「俺もやけどこの際しゃあないやん。」
双子は言い合っているが、及川が食いつかない訳がなかった。
「体操着っ。」
ババッと治に向き直る。
「ちょっと、なんでそんなレア度高めの持ってんのっ。」
「どうせなら星なんぼくらいか具体的に言うてほしいんやけど。」
「美沙さん、そういう問題なの。」
「もう開き直るしかなさそうなんよ、やっちゃん。」
細かい突っ込みを入れる被写体はほっといて、治は状況を説明する。
「たまたま俺らが泊まったホテルが同じでそんときに撮った。」
言いながらこちらも写真ビューワーを起動して及川に画面を見せた。
及川は見せられた画面を凝視し、治はどうや、と視線で語る。
「交渉成立。」
無駄に真面目くさった顔で及川は言い、こちらも二人して固い握手をした。
どこぞの業務提携か。
「美沙。」
ここで力が目が笑っていない笑顔を義妹に向けた。
義妹はこれはアカンやつやと思いつつも例によって逃げるわけにもいかない。
「体操着姿撮影されてるみたいだけど、どういうこと。」
「いや、あの、その」
「そんなこと、ちっとも聞いてないんだけど。」
「ふぎゃあああっ。」
美沙は叫ぶが義兄の矛先はなんと他にも向く。
「谷地さん。」
「はっ、はいぃぃぃっ。」
「まさかあの二人を部屋に入れたんじゃないだろうね。」
「いっ、入れてません入れてませんっ。ちゃんとお言いつけ通り、日向達以外の男子は入れないようにしましたし、宮さん達にそう伝えましたあああっ。そもそも他の子も同室だったから入れるとか無理ですうううう。」
「兄さん、やっちゃん巻き込まんといてっ。」
「美沙は黙ってな。」
「縁下っ、いい加減にしろっ。」