第65章 【烏と狐といろいろの話 その6】
「美沙すわあああああああんっ。」
どこかで聞いた田中や西谷とよく似たノリの騒々しい声がする。
聞いた瞬間美沙はゲッと呟き、その義兄は来ると思った、とこれまた諦めた調子の虚ろな笑顔を浮かべている。
「出たーっ。」
烏野側でも成田と木下が同時に叫ぶ。まあまあ失礼であるが、これも責められない。
「作並のが当たった。」
伊達工側では女川がぼそっと呟いている。
「自分がノリで言っといてアレですけど、あんまり嬉しくないです。」
「音駒か。」
予想を当てた作並が苦笑し、吹上も反応している。
その通りで、最初に叫んだ山本武虎以下、音駒高校バレーボール部の面々が到着した。
「美沙さんっ、お久しぶりっス。」
「あ、山本さん、こちらこそお久しゅう。」
「ああ、私服姿も天使っス。」
「いや、流石にそれは大袈裟や思う。あっちに女神様二人とホンマもんの天使がいてはるから。」
「美沙さんっ、清水先輩達はともかく私は天使じゃないからっ。」
「仁花ちゃん、それも違うと思う。それに美沙ちゃんも可愛いわよ、ね、滑津さん。」
「もちろん。でも美沙さん、なんで私を巻き込んだのかな。」
滑津が苦笑するが、美沙としてはあくまでも事実でしかない為、首をかしげるのみだ。