第11章 【鉄壁3年とエンノシタイモウト】
「何だお前の兄貴、おっかねえ顔してよ。」
鎌先は此の期に及んで気がついていないが美沙は慌てていた。
「ちょお兄さんモチついてっそれとそこのお兄さん」
「鎌先だ。」
「鎌先さんもはよ離してっ。」
言っている間に力はもうやってきていた。
「やめろってーっ、縁下っ。」
「ややこしいのは田中と西谷だけで間に合ってるからっ。」
「んだと成田ゴルァっ。」
「一仁っ、どーゆー意味だっ。」
ぐいぐい引っ張る2年仲間2人の叫びも意に介さず力は笑顔を絶やさないまま鎌先に言う。
「離してやってください。」
「別に取って食いやしねーっての、ほれ。」
若干勢いをつけて美沙は鎌先から力の元に戻される。
「ありがとうございます。」
ぽいっと軽く投げるようなノリで戻された義妹を素早く後ろにやりながら力は言う。一連のやりとりの間茂庭の顔面は蒼白、笹谷はさりげなくヒクついていて、烏野勢はもはや多くが呆れていた。
「まったく、毎度毎度ままコさんが噛むと何でこうなるんだか。」
月島が眼鏡を押し上げる。
「むしろ美沙さんが大変そう。」
山口は苦笑している。
「あわわわ、何か美沙さんよくおっきい人に掴まれてるよーな。」
谷地はガクガクブルブル、日向と影山はぽかんとしている。
「縁下さん、ヤバくねーか。」
「影山に言われてるっ。」
「んだと日向ボゲェッ。」
「あれはもうどうしようもないんだよな。」
「そうだ旭、考えるだけ無駄だやめとけ。」
「大地が職務放棄した。」
「菅原は止めに行かなくていいの。」
「どうせ止まんないしいーんじゃね。」
3年に至っては放置の方向だ。
「なあ、いつもこんなんなのか。」
あまりの事に気になったのかそおっと尋ねてきた茂庭に対応したのは成田だった。
「あの妹さんが絡んだ時限定で。」
「大変なんだな。」
「いい加減慣れましたけどね。」
「あ、縁下戻ってきたぞ。」
「おい、縁下妹げっそりしてねーか。」
「腹減ってんじゃね、美沙は痩せの大食いだからよっ。」
「西谷は今余計な事言わなくていーから。」