第61章 【烏と狐といろいろの話 その2】
「サム、今匂い言うてた。」
「言うてた。」
「え、なんなん、ままコちゃんて犬。」
「犬よりも草食寄りちゃうか。」
「ほな山羊(やぎ)か。」
「せめてもっと可愛いのにしたれや、クソツム。」
「ほなカピバラ。」
「もうちょい小さいやつ。」
「ほなハムスター。」
「行き過ぎや。」
「ほなサムはなんや思うねん。」
「兎。」
「それやっ、ままコちゃん地獄耳やし。」
「誰が兎とかオニテンジクネズミとかキヌゲネズミやっ。」
「オニとかキヌて、ままコちゃん何言うてんの。」
「治さんこそ、カピバラとハムスターのことに決まってますやんっ。」
「普通和訳せんて。」
「いやあ、流石ままコちゃんやなあ。」
「侑さんそれ絶対褒めてへんでしょ治さんは笑うなーっ。」
「あいつらはまた何しとるんや。」
前を歩きながら北は呆れたように後輩達の方をチラと見やる。
「ああ、こちらも妹がすみません。」
力が困ったような笑顔で言う。
「すぐ乗っかって騒ぐもので。」
北はいや、と呟く。
「おかげで双子がのびのびしとるわ。」
「え。」
「今回同伴したんは成り行きやけど、俺も楽しみになってきた。」
北は微笑み、力は意外な反応を受けて、はあと少々間抜けな返事をするしかなかった。
そうして一行は縁下家に到着したのであった。