第61章 【烏と狐といろいろの話 その2】
「もう、えらい目に遭(お)うたわ。影山巻き込んでまうし。」
「美沙、俺が悪かったからこっち向いて。」
少し怒ってそっぽを向いている美沙に困ったように笑う力、その一方で宮兄弟が何やら言い合っている。
「そもそも飛雄くんに喋らしたツムが悪い説。」
「俺が悪人みたいな説提唱すんな。」
「みたい、やのうてモロやん。人でなしがよう言うわ。」
「誰が人でなしや。」
「そこのお前以外に誰がおる。」
「人でなしちゃいますー、ちゃんと愛に溢れてますー。」
「ただしバレー愛に限る、やろ、ボケツム。」
「なんか言うたか。」
「アホツムでもわかるようにもっぺん言うたろか。」
これ以上放置すると今度は双子の喧嘩が勃発しかねない。
美沙はまた慌てる。
「ちょちょちょ、今度はこっちかいな。お2人共あきませんて、落ち着いて。」
「ほなままコちゃん、抱っこさせてっ。」
「なんでそないなんのっ。」
「俺次な。」
「治さんは相方さん止めたってっ。」
「君ら2人共俺の前でいい度胸だな。」
「あ、ままコちゃん、なんで逃げるんっ。」
「助けてーっ。」
双子の喧嘩を回避したと思えば、また別の騒動が起きそうなところで
「こら。」
凛とした声が響いて、途端に双子が大人しくなった。
今まで黙っていた北信介が腕組みをしてそんな後輩達を見つめている。
同時に縁下兄妹も固まっていたのだが、そちらは一旦スルーらしい。
「お前ら、さっきから来てすぐ何してんねん。」
「すみません。」
双子は声を揃えて謝り、しかしふと治が呟く。
「せやけど北さん、飛雄くんの時ずっと黙ってはりましたやん。」
「俺はお前らと烏野の細かい事情をよう知らんから観察しとった。せやけど、どうも遠慮せんといつもの対応で良さそうやな。」
「あ、いや、遠慮してもろても」
侑が苦笑しながら言うもすぐ北に睨まれてこれまた固まってしまった。
そうして北は双子に釣られて同じように固まっていた縁下兄妹に向き直る。
「うちのモンが早々にすみません。改めまして、稲荷崎高校3年の北信介です。今回はお世話になります。」
ここで急に物腰柔らかく挨拶された為、縁下兄妹は義兄の力ですら少々慌てた。