第60章 【烏と狐といろいろの話 その1】
毎度毎度いきなりであるが、練習が終わった兵庫県の稲荷崎高校男子バレーボール部で何やら謎なことが起きていた。
「もうすぐ休みやーっ。」
「ツム、うっさい。」
「何やねんサム、ノリ悪いやっちゃな。」
「てか待てや、阿呆ツム。この件(くだり)めっちゃデジャヴやぞ。」
「知らんわ、って誰が阿呆やっ。」
「お前。」
「なんやとっ。」
「どっちも変わんない説あるよな。」
「角名っ、お前なんやねんっ。」
「侑うるさい、耳元で怒鳴んないで。」
同じ2年の角名倫太郎から面倒くさそうに対応されて、宮侑は一瞬膨れっ面をするがすぐに、まあええわ、と気を取り直す。
「それより俺次の休み、宮城行くから。」
「は。」
突拍子もない双子の相方の発言に宮治は、何言うてんねんというニュアンスを思い切り込めた。
「なんで宮城。無茶苦茶遠いやん。」
「阿呆サム、決まってるやろ。」
「お前に阿呆言われたないわ、ほんでなんでやねん。」
鬱陶(うっとう)しいわあ、という気持ちを全く隠さないままに聞く相方に対し、侑は無駄にニッコリと笑った。