第11章 【鉄壁3年とエンノシタイモウト】
話はかなり遡る。
その時宮城県の高校バレーはまだ春高予選準々決勝の試合中であり、ご存知烏野高校1年5組縁下美沙は義兄である力のチームの試合を見に来ていた。本人がなかなか外に出ないインドア全開の動画投稿者、しかも義兄の力が何を心配しているのか来なくてもいいなどと言う為もあり来た事がなかったのだ。
だがしかし基本穏やかな義兄がいつもバレーボールについては熱く語るのだ、出不精な義妹でも聞いているうちに気になって仕方なくなりとうとう自ら会場へ足を運んだのである。
足を運んだ所丁度烏野が和久谷南と試合をしていた。この時美沙は親友であるマネージャーの谷地や義兄のチームメイトである田中の姉、冴子などがいる所から離れてこっそりと観戦していた。悪い事をしている訳ではないが側へいけば谷地も冴子も反応、世間が信用出来ないなどとよくわからない事を言い出す義兄に気づかれるのは確定だ。
そうやってこそっと義兄の力が最後の最後で活躍した所を刮目し、内心は叫びたいわ義兄のところへ駆けつけたいわという心境だったのは言うまでもない。
それを我慢して和久谷南との対戦が終わった所でこっそり帰ろうとしたのだが主将の澤村に見つかってしまったのだ。
そそくさと逃げようとしたのだがどういう訳か澤村は逃してくれず、丁度あの青城と伊達工の試合があるから一緒にと言われて引きずられてしまうこととなる。
という訳で今縁下美沙は烏野の男子排球部の連中に混じってまた観覧席にいた。すぐ隣には義兄の力、まったくもうとため息をついている。
「お前って奴は。何もコソコソ来なくてもいいだろ。」
「せやかて(そう言うけど)兄さん、私が1人で来たらすぐわあわあ言うやん。」
「お前はともかく世間が信用出来ないからな。」
「日本語でおk。」
「こんな所でネットスラングを使わない。」
義兄妹が言い合っていると副主将の菅原がはいはいそこの兄妹と口を挟む。
「公衆の面前でラブラブすんなよー。」
「菅原さんっ。」
「ラブラブて何の話やーっ。」
「美沙はおっちんとん(お座り)。」
「人をちっさい子みたいにっ。」
ハハハと今度は澤村が笑い、美沙は顔を赤くした。