第58章 【王者の恩返し】 その5
そうして鳥野勢も好き勝手感想を言っている中、店の入口が開いた。
縁下美沙は気づいていない。他の連中もだ。
しかし義兄の力は何の気なしに入口に目をやり、瞬間うっと唸った。
唸られた方は聞こえたのだろう、一瞬キョトンとするが力と目が合い、イケメン全開の笑顔で手を振ってくる。
「兄さん。」
「どうかしたか。」
力の様子がおかしいことに気づいた義妹と牛島が声をかけた。
「美沙、お前また引き寄せ発動させたな。」
力は呟く。
「いきなりなんなん(何なの)。」
「及川さんが来た。」
美沙は声もなく動く。
「店のテーブルに隠れるのは良くない、他所(よそ)の子供が真似をする。」
「いや牛島さん、それどころやないです。」
どの道もう遅い。
「ヤッホー、美沙ちゃーん。」
青葉城西の及川徹が満面の笑みで手を振っていた。
次章に続く