第57章 【王者の恩返し】 その4
「え、えっ、五色。」
ここで日向が声を上げる。
「まだ食うのっ。」
日向も大概食べている方なので人のことを言えた義理ではないと思われる。
が、さっきまで相当食べていた五色がもう立ち上がって次に進もうとしていたので聞かざるを得なかったようだ。
「ま、負けねー。」
五色は気合を入れている模様だが、少々苦しそうである。
「おい、馬鹿、もう無茶すんなっ。」
「流石にやめとけって。」
瀬見と大平が静止にかかるが五色は大丈夫ですっと押し切って次の料理を取りに行ってしまう。
わざわざ縁下兄妹と牛島がいるテーブルの側を通って、何やら美沙に言っているようだが言い返されている。
あんた、まだ言うとんのといった言葉が聞こえるあたりまた負けないのなんのと言ったのだろう。
ほどなく五色はいろいろ盛って戻ってきた。
美沙に対抗したのか結構ごっつい揚げ物が多いのは気のせい、ではない。
席について美沙が向こうでもぎゅもぎゅと食しているのを見つめながら、また食べ始める。
「工、頑張れー。」
呑気且つ無責任に言う天童、白布と川西にいたっては沈黙している。
もはや何も言うことがないのだろうが、しかし後輩を見つめる2人の表情は明らかに呆れ返っていた。
「あ、あのさ」
烏野側から日向が呟いている。
「五色、マジで大丈夫なの。」
「そういう自分もどんだけ。」
月島に突っ込まれた日向はう、うるさいっ、と返すが、実際日向ですら心配するくらいだ。
何とか食べてはいるものの、五色の顔は真っ赤になっている。
「いやお前、マジでもうやめとけって。箸つけてないやつ分は引き受けるから。」
山形が言うも五色は首を横に振って聞かない。