第56章 【王者の恩返し】 その3
「ままコ、絶対俺が勝つからなっ。」
「いやせやからなんのこと。」
「お前もやるみたいだけど俺も負けない。」
「話聞きーなっ(話聞いてよ)。」
「俺の方が絶対食えるしなっ。」
「あんたは阿呆かそっちは男子な上に運動で鍛えとるしどー見ても私より図体でかいんやから当たり前やろ比較対象どないなっとんのそもそも根本的に何で勝負やの話の流れどこいったん」
「お前息継ぎどーなってんだ。」
「誰のせいやーっ。ちょお牛島さん、後輩さんどないかしてくださいっ。」
高速でまくし立てた美沙はゼエゼエハアハア言いながら牛島に抗議したのだが、
「何か問題があるのか。」
当の主将は無表情で淡々と、しかしどことなくのんきな様子で言った。
「あらいでかっ(あるわけないと思うのか)。」
「美沙、落ち着いて。」
「せやけど兄さん」
「このまま進めても話がボケ on ボケになるだけだから。」
「この場合私はボケ側なんやろか。」
「どうかするとボケに傾くから。」
「俺をボケ前提で話されてるのは納得がいかないのだが。」
「ああ、ええと」
「せやから牛島さんはてんね」
「美沙、やめなさい。」
「ままコにまだ天然呼ばわりされてるなんてまだまだまですね、牛島さんっ。」
「あんたもどーるい(同類)や、はよ行きっ、ややこしいっ。」
「ややこしい言うなっ、とにかく勝負だっ。」
「成立せん言うてるやんっ。」
「やってみないとわかんないだろっ。」
「これは明らかやろっ。」
「そーなんですかっ。」
「待って、なんでそこで俺に振るの。」
「お兄さんならわかると思ってっ。」
「まあ兄貴だからってんじゃなくて普通に美沙の言い分に賛成だな。」
美沙の義兄から穏やかにしかしはっきり言われ、さしもの五色もむうと一度口を噤む。
「ほら、見てみぃな。」
「く、くそぅ。」
「とりあえず私はご飯に戻るで、せっかく牛島さんのご馳走になるんやから。」
「お、おぅ。」
言葉通り美沙は食べかけていた八宝菜に戻り、勢いを削がれた五色は一旦席に戻った。
戻った瞬間にはもう料理にがっついて、さしもの白鳥沢勢も苦笑している様子だが気にしない方が良いだろう。