第10章 【関西弁の色物】
翌日の朝である。
「おはよう飛雄君、朝から何プルプルしてるん。」
東京某所では宮が影山に話しかけている。
「ベ、別にっ。縁下さんから宮さんにままコのメルアドとかメッセアプリのID流したらただじゃおかないって来たとかじゃないっスっ。」
「全部自分でバラしてもてるやん。あとえらい言われようやな俺。」
「だから縁下さんはままコが絡むと人が変わるっつったんすよっ。」
「ごめんごめん、えらいとばっちりになってもて。ますますおもろいなぁ。あ、飛雄君この子どこの動画サイトでやってるん。」
「何か笑ってるみたいな名前の」
「ようわかった。」
烏野高校男子排球部部室では縁下力がぶつぶつ言っていた。
「うーん、困ったな。」
「どうした。」
2年仲間の成田一仁に聞かれて力はそのまま答える。
「うちの美沙がまた色物に好かれたみたいでさ。」
たちまちのうちに成田以外の2年生達がブッと吹き出した。
「おいおい今度は誰だよ。」
木下久志に笑いながら尋ねられ力はムスッとする。
「どこの学校か知らないけど影山と一緒に合宿してる人。しかも関西弁らしい。」
「おお縁下妹の同類現る、か。」
「良かったじゃねーか、美沙も仲間が増えてっ。」
「冗談じゃない、これ以上色物に近寄られちゃ困るよ。」
「縁下妹に近づく野郎は全部色物枠なのか。」
西谷夕、田中龍之介まで参加して会話はひどい事になり、そんな2年連中を見て主将の澤村大地がため息をつく。
「2年はまた縁下んちの話か。今度は何だ。」
「美沙ちゃんが遠くの色物に気に入られたらしいぞ。」
副主将の菅原孝支が笑いながら言うが東峰旭があわわと震える。
「どっからそうなっちゃうんだ。美沙ちゃんも大変だな。」
「やー、妹モテモテじゃん。」
「スガ、やめてやれって縁下が気の毒だよ。」
更にその日ハンドルネームままコのスマホにはまたも動画サイトからブックマークされた通知が来た。おまけに別途やっているSNSからは新規フォロワーの通知とそのフォロワーからメッセージを受信した通知まできた。
「兄さんに言うたもんやろか。」
ままコこと縁下美沙が悩むのは無理もないかもしれない。SNSのメッセージ送信者はどう見てもあの宮侑だった。