第56章 【王者の恩返し】　その3

「てか月島はなんか美沙とはケンカしにくそーだな。」
「そら西谷、お前や日向達と比べりゃ。」
「どーゆー意味だ、一仁っ。」
「ちょっとぉ、俺を蚊帳の外にしないでヨネ。」
「いや天童はこれ以上噛まなくていい。」
「セミセミひどーい、俺の味方じゃないの。」
「味方だけどセミセミ言ってくるやつに優しくしたかねえな。」
「理不尽っ。」
「理不尽の意味検索してから言えっ。」
「大人気ないですよ瀬見さん、いやわかってましたけど。」
「いちいち煽るお前もどーなんだ、賢二郎。」

山形がため息混じりに突っ込むが白布は意に介した様子がない。

「薬丸と関わると必ずめんどくなるんで。」
「だからって俺で発散すんなっ。」
「瀬見さんは人生においてだいたいそういうポジションでは。てか賢二郎、結局めんどくなるのわかってて来」
「何か言ったか、太一。」
「睨まれた。」
「こらこら、お店で内輪もめはやめなさいよ。」
「ダヨネー。」
「天童、お前は発端。」
「獅音もまぁまぁ容赦ないネ。」
「うん、舌打ちされる覚えはないな。」

大平が微笑みながらも若干キレている様子を見せている一方では

「こら1年っ、」

澤村が動いた。

「美沙さん巻き込んでまで揉めるなっ。」

烏野の1年は美沙も含めてすみませんっと居住まいを正す。

「すまん澤村、そもそもはうちの天童が絡みにいったから。」
「いやちゅうか私がその流れでつい影山に突っ込んでもたせいでえらいことに、ほんますいません。」
「それ言ったら俺ら2年も止められなかったんですみません。」
「田中に突っ込ます事態になっちまったし。」

成田や木下までもが言い出したので何だか話が混乱してきた。

「責任の所在が迷子。」

離れたところで菅原がぼそっと呟き、

「私も止めに入るべきだったかな。」

さしもの清水もこめかみに汗が浮かんでいる。

「いや無理だろ、あのカオスに俺らが介入するの。」

とはいえ澤村が介入したおかげか、幸い東峰が言っているうちに騒ぎその1は収束していき

「何かあったんですか。」

ちょうど力と牛島が戻ってきた。

「あ、兄さん、牛島さんおかえりなさい。別に何もないよ。」

のんきな調子の関西弁で言う美沙の機転に烏野・白鳥沢両陣営の多くがナイス妹、と思ったのは言うまでもない。