第55章 【王者の恩返し】　その2

「すまん、牛島。無事か。」
「ああ。聞くが澤村、お前らは外に出ると常にこの調子なのか。」
「縁下兄妹が出かけると何か引き起こすのが前提だからなぁ。」
「大地さん、俺は別に敢えて引き起こしてないです。美沙が他校引き寄せて変なのに絡まれないなら苦労はないんですけど。」
「私のせぇなん。」
「変なのって、お前牛島さんをdisってんのか。」
「誤解だよ、白布君。ほらこいつ、他でコアなファンがついちゃってるから。」
「青城の及川さんにあの2年のおっかないの、伊達工の二口、うちの天童さんと工、県外だと梟谷の木兎さん、音駒なんか3人くらいいたよね。」
「それが川西君、最近更に稲荷崎の宮兄弟も増えちゃってさ。」
「二口さんはファンちゃう、いっつもいらんことばっかし言うてくるもん。宮さんズもおちょくっとるだけやん、特に侑さん。」
「川西さん、俺も別にでんのう、いや美沙、さんのファンじゃないっス。」
「って、五色君も言うてるし。」
「何でアンタは毎回そう鈍感な訳、馬鹿の呼びつけには応じない程度の頭はあるくせに。」
「山口っ、通訳っ。」
「お兄さん以外にも美沙さんが好きって人はいるよって話だよ。」
「それで無断抱っこされとったら世話ない気がするんやけど。」
「影山、大王様のアレ止めらんないの。」
「俺で止まるならとっくにどうにかしてるに決まってんだろ、このボゲ。」
「ノリで聞いただけなのに罵倒っ。」
「岩泉さんに怒られてもやってるもんね、及川さん。」
「やっちゃん、言わんといて。」
「及川は美沙ちゃんが優しいから甘えてるのよ。」
「清水先輩、それもよう言われますけど私としては異議が。」
「先輩の言う通りだよ、お前は律儀で人がいいから。」
「妹に止めを刺してくスタイルの兄ってどないなんでしょ。」
「及川の行動は当然問題だ。が、お前が奴に甘いのも事実だ。」
「牛島さんにまで言われるて何事。」
「そしてエンノシタチカラ、お前も行き過ぎている。」
「牛島さんに言われるとぐうの音も出ませんね。」

力が苦笑したところで本当にぐうの音が出た。
騒がしすぎて知らないうちにまた周囲の注目を浴びていた一行は一瞬沈黙した。