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【ハイキュー】エンノシタイモウトこぼれ話

第55章 【王者の恩返し】 その2


さて、縁下兄妹と牛島が店へ入っていった少し後、店からは道路を挟んで向かい側でのことである。

「入ったネ。」

天童覚が手庇(てびさし)をして店の方を見ている。

「だな。」

応えるのは澤村大地である。

「てゆーかよ、」

呆れたように口を開くのは瀬見英太だ。

「こんだけ向かい側に俺らがたむろってんのに何で若利もあの兄妹も気づかねーんだ。」

そう、烏野及び白鳥沢の男子バレーボール部の面々は本当に縁下美沙と義兄の力、そして牛島若利が食事に出かけるのを見物に来たのである。
一部を除いてでかい上に個性的な野郎共がわらわらと集まっている様は、下手すれば渋谷で迷惑行為をする輩と同一視されそうな勢いだ。

「いや、縁下は気づいてると思うぞ。」

笑顔で言う澤村に瀬見はマジかとつぶやく。

「一瞬だったけどな、こっちチラ見してた。」
「流石縁下、やりおる。」

無駄に感心するのは田中だ。

「それより、」

ここで口を開いたのは成田である。

「縁下達も入っていったことだし、俺らもそろそろ行きませんか。」
「なんでお前が仕切るんだよ。」

きつく当たるかのような口調で白布に言われ、しかし成田は少々怯(ひる)みながらも笑ってみせる。

「うちからついてくって最初に言ったの俺だから責任持ってと思ったけど、白布君に頼めるならそっちのが安心だな。」
「いや、そっちで適宜やっといてくれ。」

すんとした無表情で白布はつぶやき、それ以上は何も言わない。

「まぁ君だって面倒くさいのはごめんだよな。」

微笑む成田に対し、白布は眉間に皺を寄せた。図星だったのかもしれない。

「成田、やりおった。」

ごくごく小さく木下が呟いて、烏野の他の連中もうんうんと密かに頷く。

「縁下が美沙さんのことで暴走しても成田がいるから安心だと思えるよ。」

東峰にいたっては完全に父親か親戚のノリである。

「賢二郎、せっかくの休みなんだしそうカリカリするなよ。」

ここで大平が笑って後輩に言った。

「工がちょっと怯えてるぞ。」
「お、大平さん、俺は別にっ。」

引き合いに出された五色工は高速で否定するが、残念ながら肯定しているのと変わらない。
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