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【ハイキュー】エンノシタイモウトこぼれ話

第55章 【王者の恩返し】 その2


縁下力・美沙の義兄妹及び烏野の男子排球部が牛島及び白鳥沢の男子バレーボール部と邂逅して混沌状態となった日からしばらく、とうとう牛島と約束した日が来た。

「美沙、」

力が義妹の部屋のドアを軽くノックしている。

「支度終わったかい。」
「今ちょうど。」

関西弁の抑揚で義妹が答えて、ドアがカチャリと開けられる。

「どないやろか。」

普段おしゃれ何それおいしいの、を地で行く美沙はおずおずと義兄に尋ねる。
力は義妹の格好を一瞥して微笑んだ。

「いいと思うよ。」

それに可愛いというのは義兄としての本音だが、義妹は今日も安定の森ガール風である。浴衣も嫌いと非国民レベルの発言をするくらい締め付けられる服装を嫌う美沙は、よそ行きでもだいたいゆったりした服装になる。
そのくせ肩からガジェットケースは標準装備、なのであるが

「お前また新しいケース買ったのか。」
「あれ、気ぃついた。」
「前は白くて籠みたいに編んだやつだったから。」
「あれ、傷んでもたからしゃあなしに(しょうがなしに)ほった(捨てた)。ちゅうかよう覚えとったね。」
「一応兄貴だからな。」

力は呟いて義妹が下げているガジェットケースにもう一度目をやる。
新しく買ったというそれはオレンジ色で、金メッキの洒落た金具がついている。全体の素材はこれまた合皮のようだった。
オレンジ色と言っても少し落ち着いた色合いで、義妹の着ている服に対してアクセントになっている。

「出かける度思うけど、いつもファッションなんて知ったこっちゃないって顔してる癖に小物の色を合わせたりとかはするよな。」
「けったいな(変な)色で人と会われへんもん。」
「何でそれを日頃のファッションに生かさない。」
「そない変な色のもん着てるん、私。」
「いやそうじゃないけど、なんというか」

力はだいたい地味と言いかけたのだが、自分だって地味キャラだとそこは堪えた。
美沙のことだ、兄さんだって地味などと言ってはこないと思うけれども。
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