第53章 【Sorry for Dali その6】
その後力は義妹から茂庭と見たダリ展の様子や、後で及川に教えてもらったという噴水ショーの話などを興奮気味に伝えられたのだった。
余談であるが、及川徹はこの日の夜、ふいにスマホに入ってきたテキストメッセージを読んで叫んでいた。
「ちょっと美沙ちゃんひどい何で縁下君に喋ったのさっ。」
「いちいち喚くな、いつもの流れだろが。」
騒ぐ及川の後ろでは腹ばいの岩泉が漫画雑誌をめくっている。
「岩ちゃんは何で俺の部屋にいるんですか。」
「あの半分ボケに出くわした日は大体お前が荒れると思って念の為来た。おばさんにも許可は取ってる。」
「荒れてないよ失礼なっ。」
「毎度毎度あの半分ボケが自分以外と外出たって聞いたら、何でだのずるいだの男の方が羨ましいだのと聞かされてるのは気の所為か。」
「だって美沙ちゃん大抵俺の時と態度全然違うんだもんっ。それより何で今日美沙ちゃんと会ったからって縁下君からクレーム入んのさっ。」
「だからいつもの流れだろが、二度言わせんな。あの兄貴が絶対妹から事情を聞くし、そっから黙ってる訳ねーだろ。」
「フンだ、いいもんね。縁下君と美沙ちゃんがその調子なら」
「おうおう、ちょうどいい。これを機に半分ボケの追っかけはやめるこった。」
「絶対ヤダッ、やっぱりやめない。」
「だったら静かにしろ、てめぇが落ち着かないと俺が帰れないだろが。」
「勝手に来て上がり込んでるだけじゃんっ。」
そんなこんなで翌日である。
「結局美沙さんはどうだったんだ。」
烏野高校男子排球部の部室にて、成田が尋ねてくる。
密かに残りの2年仲間、澤村以下3年生、1年生達が寄ってきて聞き耳を立てている。
月島ですら顔は興味ないといった様子の癖に、きっちり話を聞いている始末だ。
「ああ、随分楽しんだみたい。」
着替えながら力は答える。
「帰ったら大分興奮して話すもんだから参ったよ。相手が茂庭さんだったから余程安心出来たんだろうな。ただし」
ここで一瞬力が口を噤んだので、排球部の連中はあ、来たと思ったという。