第52章 【Sorry for Dali その5】
そんな時だった。
ふいに力はスマホの振動を感じる。
おそらくメッセージアプリの着信だ。
「すみません、先行っててください。」
制服のポケットからスマホを取り出しつつ、力は仲間に言う。
まさか歩きスマホをする訳には行かないし、自分を除いて計13名の大所帯に道の途中で一緒に止まってもらうのも良くない。
通行人の邪魔だろう。
「家から連絡か。心配しなくてもここは道幅もあるし、この時間ならそうそう人も通らないよ。」
澤村が言うと他の仲間もうんうんと頷く。
成田以下2年仲間は妙に強く頷いている理由は察しがつくから、そこは何となく気に入らない。
が、せっかくの主将の言葉に甘えて力は皆に待ってもらい、スマホを操作した。
やはりメッセージアプリに着信がある。
通知をタップして開いてみると、愛してやまない義妹の名があった。
どうやら茂庭と帰りの電車に乗ったらしい。
ご丁寧に乗り込んだ駅も書かれたそのメッセージの送信時間を見て、力はほんの少しだけ考えて返信を打つ。
"迎えに行く
丁度こっちも部活終わって帰ってるとこ"
少しの間。
"大丈夫やよ、茂庭さんも途中まで一緒やし"
"その後が心配だから"
"まだ日ぃ高いし大丈夫やてw"
義妹は草を生やしてやんわりと抵抗してくるが、当然負ける力ではない。
"迎えに行くから着いたら連絡して"
動揺したのか打つのが面倒になったのか、今度は義妹愛用のきのこキャラスタンプが来た。
手をバッテンにして拒否の意を示している図柄だ。
力は即、連絡してね、という意味のスタンプを返す。
また拒否の意のスタンプ、同じきのこキャラだがデザインが違う。義妹はもしかしてまたスタンプを増やしたのだろうか。
プリペイドカードの買いすぎ、はないと思うが。