第2章 【マドレーヌの話】
「田中さん、それ以上は言っちゃダメですぅぅぅぅっ。美沙さんはお裁縫道具常備してたりキノコキャラ好きだったり縁下さんがくれたリボンつけてみたり何気に女子力ありますぅぅぅぅぅぅっ。」
「ハハハ、谷地さんありがとう、でも大丈夫だよ。というわけでそんなこと言う田中にはやらない。」
「スンマセンデシターッ、撤回しますからお恵みくださいぃぃぃっ。」
「しょうがないな、まったく。」
「あー、うるさ。」
「賑やかだよね、ツッキー。」
「わ、いい匂い、うまそー。」
「てめ日向っ、涎(よだれ)汚ねーだろがっ。」
ため息をつく力に傍で聞いていた1年4人組もわいわい言い出す。
「まぁそれはともかく、皆さんどうぞ。」
「ありがと。あら、上手に焼けてる。」
清水潔子がにっこりと笑いそれを見た田中と西谷が昇天しそうな顔をしている。
「あの美沙ちゃんがねぇ、嬉しいな。」
東峰旭がのほほんと笑い、主将の澤村大地がそうだなと頷く。
「はい、菅原さんも。」
「お、サンキュー。」
「美沙いわくもしあれならお母様にどうぞってことでした。」
「何という気遣い。躾行き届いてんなー、縁下。」
「うちの美沙ですから。」
「あのぉ、何か美沙さんがペットみたいな扱いになってるんですけど。あ、おいしい。」
谷地が苦笑すると月島蛍が似たようなもんでしょと呟く。
「ツッキー、縁下さんに怒られるよ。」
などと突込みつつ山口忠はマドレーヌを食しながら顔がほころんでいる。
「うめー、美沙すげー。」
日向翔陽は完璧に年齢が本来より下に見られるレベルで喜んでおり、影山飛雄はほとんど言葉を発していないが顔がウマ、と言っている。
「もう美沙さんは料理コンプレックス卒業でOKだな。」
成田が笑う。
「美沙が聞いたら喜ぶよ。」
「でもさ、」
木下がモギュモギュしながら言った。
「ブラコンは当分卒業出来ねーんじゃね。」
「木下、半分返せ。」
「ごめんてっ。」
木下は慌て、それを見た力はクスクス笑う。
「チェッ、ホント妹には甘いんだからよ。」
「というか美沙さんのブラコンを何とかするならまず縁下のシスコンを何とかしないと。」
「成田、俺に恨みでもあるのか。」
「ないよ、これマジうまい。」