第52章 【Sorry for Dali その5】
噴水は音楽に乗っているかのように次々と噴き上げ方を変えていく。
下の段から上の段へとにバシュッバシュと真っ直ぐ太い水柱が順番に上がっていくかと思えば、上から細く放物線を描いて繊細に噴き出しては落ちていく。
そうかと思えば急に霧のように噴き出して、日向で少し暑く感じる周囲を涼しげに包み込む。
更にランダムに噴き上がったり止まったり、滴が宙に弾けては落ちて消えていく。
現実的な話は置いておいてまるで水が意志を持って舞っているようにすら見えた、少なくとも美沙には。
美沙と茂庭を始め、その場にいた観客達が見つめる中やがて音楽はクライマックスに入り、一番大きな水柱が噴き上がって観客達が盛大な歓声を上げたところで音楽が止まる。
そしてほんの一瞬遅れて、水柱もまたバシャアアッと霧散した。
ほんの少し噴水の周囲は沈黙していた。
が、誰かがあ、終わったと呟いたのを合図にしたかのように観客はあっさりと各々また好きな方へ歩き出し、同時にまた賑やかになっていく。
そんな中、縁下美沙はまだじっと噴水の方を見ていた。
「美沙さん、」
茂庭が心配そうに声をかけると美沙はすぐに振り返る。
「めっちゃ良かったですね。」
にっこりと笑う美沙に茂庭は目をそらす。
「そ、そうだな。やっぱり及川に感謝だ。」
「あとでお礼のメッセ送っときます。」
「俺もそうしよう。って、及川のID聞いてないかも。」
「私グループ作りますよ。」
「ああ、助かる。」
話しながら2人はまたもと来た道を戻り始めた。