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【ハイキュー】エンノシタイモウトこぼれ話

第50章 【Sorry for Dali その3】


義兄が自分の事で何やら弄られるわ、コーチにまであらぬ疑いをかけられるわとなっている事など露知らず、縁下妹こと縁下美沙は茂庭要と美術館に到着していた。

「美術館のこういう雰囲気好きだな。」

入り口のところで茂庭が呟く。
隣にいた美沙がふと見ると伊達工バレー部前主将は美術館の建物を見上げていた。

「何かこう、静かで落ち着いてる感じ。」
「静謐(せいひつ)、ですね。」
「流石だな、美沙さん。」

茂庭に微笑まれ、美沙もつられて微笑み返す。

「私も好きです、この雰囲気。」
「そりゃ良かった。」
「またここの建物がなかなかモダンで。」
「確かに。でも美沙さんってホント、いくつなのかわからない時があるよな。」
「物言いが古臭いから。」
「や、そういうことじゃなくって、その」
「怒ってませんよ、よう言われるんで慣れてます。」
「だからそうじゃなくて」
「ちゅう冗談は置いといて」
「まさかの美沙さんからの弄り。」
「たまには。」

よく響きそうな場所なのを考慮して控えめに笑い合う2人、
何も知らない者が見たら普通に彼氏彼女が仲良くやって来たようにしか見えないだろう。
少女の方は養女で且つ義兄と一線を越えた身、少年の方は知り合いでたまたま付き添いをしているだけとはそうそうわかるまい。

そんな2人は他愛もないやりとりをしてから、ふと沈黙する。

「中入ろうか。」
「そうですね。」

返事をしながら美沙は鞄をゴソゴソしてチケットを引っ張り出した。

「茂庭さん、はい。」

1枚を茂庭に渡し、茂庭はありがとうとそれを受け取る。

「入り口が混んでない今のうちだな。」
「はい。」

そうして2人は美術館の入り口に向かっていった。

入り口の側に置いてある立て看板には、シュルレアリスムの巨匠・サルバドール・ダリの名が入っていた。


高演色形蛍光ランプの明るめの光が館内を照らしている。
老夫婦、若い男女、学生らしき者、親子連れ、車椅子の人など老若男女が順路に沿って歩いている。

受付を済ませた縁下美沙と茂庭要もまたその列に加わって静かに歩く。
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