第49章 【Sorry for Dali その2】
「いやまぁ、茂庭さんを信じてない訳じゃないけど、どうにも本能的に落ち着かないっていうかなんというか。」
「そりゃぁ自分の彼女を貸し出すんならね。」
「よせよ。」
「余程関心のない層を除いてもはや公然の秘密だろう。第一君の溺愛ぶりが自らバラしてるも同然。」
「どこまでも厳しいな。」
「まぁそれは置いといて、大丈夫なんじゃない。」
「冗談とは言ってくれないんだな。」
苦笑する力に赤葦はうん、と答える。
「あの人見知りなままコさんに縁下君と同じ匂いするって言われた人なら変な事しなさそうだし、どこまで君ら兄妹の事情知ってるのか知らないけど2人の仲を引き離すマネはしなさそうだし。」
2人は音声のみで通話していた為、お互い顔は見えていない。
しかし力は後半、赤葦がニヤニヤ笑いながら言っているように聞こえて思わず声を上げた。
「勘弁してくれよっ。」
しかし赤葦は電話の向こうでクスリと笑って取り合わない。
「どうしても気になるってんなら今からでもライブ配信始めてリスナーに聞いてみたら。コミュニティの主はままコさんだけど、確か配信権限もらってたよね。」
「また良くご存じだな。っていうかどう考えても俺がリスナーに好き放題言われる未来しか見えない。」
「良くご存じで。」
「混ぜっ返すなって。」
「リスナーとしてはそれが楽しみだろうからね。」
「リアルで弄られ、配信でもおちょくられる俺って何なんだ。」
「何にせよ本当に心配すべきはままコさんが何か引き寄せないか、ってとこだろうね。」
「マジそれ。茂庭さんには言っておいた。」
「抜かり無いな。」
そんな赤葦とのやり取りを思い出した力、東京勢にも言われたというのにやはりソワソワしっぱなしである。
「おーい縁下ー。」
とうとう菅原に声をかけられた。
見れば副主将は思い切りニヤニヤしている。
「めっちゃソワってんぞー。」
「べ、別にっ。」
とか何とか言いつつ図星なのは自分が一番わかっている。
「何だ何だ、美沙ちゃんが浮気すると思ってるとか。」
「違いますってっ。」
当然慌てて否定する力、しかし
「まぁセクハラの心配がないなら確かにそっちの心配になるよな。」
成田が乗っかるときた。
毎度何の様式美だよもういらねぇからと力は内心突っ込みを入れる。
そして勿論こんな流れで木下が黙っている訳もない。