第48章 【Sorry for Dali その1】
「この所美沙さんがどこかへ出かけるとほぼ100パー他校と出くわして一悶着あるのでそっちを心配してるかと。」
「何じゃそりゃ。」
不思議そうにする笹谷、成田はこの時普通はそう思うよな、と思ったという。
「他校の美沙さんファンに暴走する人が多くて、セクハラ行為に及んだり面白がって弄り倒したりするんです。あと、ファンじゃないけど美沙さんを怒らせるパターンとか。」
「わり、それ確実にうちの黄金川と二口だよな。てか、鎌ちもいっぺん勢い余ってひっつかんでるし。」
「んだとぉっ。」
「あ、セクハラは主に青城の及川さんっす。」
「は。」
「木下、その情報は今いいから。」
木下に突っ込んだ成田はそれより、と一息ついてから美沙の義兄の方を見た。
「縁下ー、もう考えるだけ無駄だって。さっきも言ったろ、美沙さんは引き寄せる時は引き寄せるし誰が一緒でも止まらないから。」
それでも力はまだ迷っている様子を見せ、とうとうこの男が口を開いた。
「縁下、」
澤村が後輩の方に手をポンとおく。
「そう心配ばっかりしても始まらないぞ。一緒にいるのが茂庭君なら他より確実に安全だろ。」
なおこの時澤村は平静を装う努力はしているものの、こめかみのあたりに汗が浮かんでいた。
無理もあるまい、そのつもりはなくても茂庭に対して微妙に失礼である。
主将にまで言われて力はとうとう腹をくくったらしい。
「茂庭さん、」
くるっと向き直って力は深々とお辞儀をする。
「日曜日、妹をよろしくお願いします。」
「お願いします。」
美沙も一緒にお辞儀をする。
えらく改まった状態になったので茂庭はまた慌てたように言った。
「ああいや、そんなかしこまらなくても。こちらこそよろしくお願いします。」
「それで、先にお耳に入れておきたいことがあるんですが」
話が決まった所で言う力に木下と成田がやべっと呟き、烏野の他の連中も始まったぁとなる。
「何だい。」
何も知らない茂庭はキョトンとする。