第48章 【Sorry for Dali その1】
「あーその、縁下君、いいかなぁ。美沙さんと一緒に美術館に行っても。」
何せ義妹が絡んだ時限定でややこしくなると評判の縁下力である、茂庭が慎重になるのは仕方がないだろう。
力はというと話を聞いてしばし考え込んでいる様子だった。
烏野の方ではいつもどおり木下と成田が、縁下が妙な行動に出ませんようにと祈りながら見張っている。
「ええでしょ、茂庭さんやったら。」
考える義兄に対し美沙は言った。美沙からすればせっかくのチャンスである、ここで逃してなるものかというところだ。
しかし、
「兄さんと同じ匂いの人やから安心やし。」
ダメ押しするならもう少し言いようはなかったのか。
月島がボソリと出たよままコさんの半分ボケ、と呟いているのは当然聞こえていない。
「この馬鹿っ。」
たちまちのうちに力は耳まで赤くなり、茂庭も勿論動揺する。
傍で聞いている方も多くは顔が少し赤い。
「いやぁ流石縁下、愛されてますなぁ。」
菅原が顔を赤くしながらもニタニタ笑っている。
「美沙ちゃんは唐突に全力ブラコン発言するから心臓に悪い。」
東峰は少しプルプルしている。
「美沙ちゃんらしいわね。」
清水は静かに言うが、流石の彼女も今回はうっすら赤面している。
「匂いって、美沙そんなに鼻良かったか。」
首をかしげる西谷には
「いやノヤっさん、多分そっちじゃねぇ。」
田中が突っ込む。
「基準はどこまでも縁下さんかぁ。」
山口が苦笑し、谷地があははとこちらは乾いた笑いである。
「ブレないよねぇ。」
「前にも思ったけどあれ聞いてる方がめっちゃ恥ずかしい。」
日向は他の連中以上に顔が赤い。
「だから変人扱いされるんじゃねぇのか。」
影山に言われては美沙の立つ瀬がない。
好き放題言われている間、美沙の義兄である力は顔を赤くしたままでまだ考えていた。
美沙はじーっと義兄を見つめて待っている。
「何だ何だてめぇ、茂庭が信用ならねぇってのかぁ。」
とうとう鎌先がまるっきり絡むヤンキーみたいな表情でずずいと力に顔を近づけようとし、笹谷に止められる。
「いやそっちじゃないっす。」
恐る恐るだが木下が頑張ってフォローを入れ、鎌先はあん、と首をかしげる。
説明をしたのは成田だった。