第45章 【王者の命】その5
その後も練習試合の割に目が離せない展開が続いた。
縁下美沙は具(つぶさ)に記録すべくカメラを回し続けてはバッテリーの残量やメモリーカードの容量に気を配り、不足してくると素早く予備のカメラを回しつつそれらの交換をする。
当然必要そうなところはズームインしてみたり逆にズームアウト、義兄の力がコートにいようがいまいが関係ないその集中ぶりは普段の半分ボケぶりと比べれば随分と差があった。
集中していた美沙は気がついていなかったが烏野のベンチで控えている義兄は時折義妹は大丈夫かと目をやっていて、トラブルになっている様子がないのを確かめてはホッとしている。
いたしかたなく連れてきたはいいがのっけから牛島をペシペシするし、先程は鷲匠をなでなでするという真似をしたので油断がならない。
次は誰かと喧嘩になったりしないと良いけど、と力が思ってしまう事は誰にも責められないだろう。
さて、やはり王者は圧倒的である。
烏野は先程の攻撃―シンクロ攻撃と呼ぶ事を後で義兄から聞いた―も含めて健闘していたものの結局そのセットも落とした。
美沙の目からは以前の音駒相手の時よりもやっている回数は少ないのにコートに入っている連中があの時より消耗しているように見える。
そこまで細かく撮影している訳ではないが挟まるタイムアウトの様子を見ていたりすると飛びっぱなしの日向は前見た時より息が切れぎみだったし、あまり人に表情を読み取らせない―義兄の力他一部にはともかく―月島からも疲労が見てとれる。
東峰も表情が固くてそれでなくても怖がられる彼はもし知らない人なら美沙もビビったかもしれない。
影山がこういう場合に静かなのはいつもだろうが、基本的に元気な田中と西谷もあまり話していない所からして相当だろう。