第43章 【王者の命】その3
突然自分達の所の顧問とコーチ、挙句の果てにはチームメイトが白鳥沢側に呼ばれたかと思えば顧問とチームメイトが白鳥沢のコーチと妹を迎えに行くなどと告げられた烏野の連中は困惑していた。
「超慌ただしかったな。」
木下がヒソヒソと言うと成田が頷く。
「そもそもあっちに呼ばれたと思ったら美沙さん連れてくるって流れが意味不明すぎる。」
「白鳥沢にファンがいるからとか。」
「ファンてどのへんの人らだよ。」
「五色君とか天童さんとか、牛島さんは微妙だけど。」
「天童さんはただの面白がり枠だと思う。」
2人はしばらくそうしてヒソヒソ言い合っていたが
「コラ木下っ、成田っ、くっちゃべってんじゃねぇっ。」
烏養が怒鳴る。
「ったく、比較的まとも組まで勘弁しろよな。」
「すみません。」
だが木下、成田はそれで落ち着いても約1名がはいはいと手を挙げる。
「コーチ、力がまた美沙の事で無茶振りしたんスかっ。」
西谷である。こいつはこいつで一体自分ら2年のまとめ役を何だと思っているのか。
「いや向こうさんからの依頼だけど、とりあえずお前らはやることやれっ。」
流石に2度も烏養に怒鳴られたので選手達は何も言わずウォーミングアップに勤しむ。
それでも澤村は何があったかわかんねぇけど平常心平常心と内心で唱え、菅原はやっぱり美沙ちゃん来るかーとぼんやり思い、東峰はあの子来ちゃったらどうなるんだと不安がり、影山はままコがココ来て何すんだと素朴な疑問を脳内で呈して、日向は影山と美沙と偵察したの向こうの監督にもバレたらどうしようと怯え、山口はあんだけ縁下さん気をつけてたのにと青ざめ、月島はそらこうなったと達観していた。
何より田中が縁下生きろなどと心の中で祈る始末、これはもうどうしようもない。
「清水先輩、」
谷地がこっそりと言った。
「結局美沙さん来ちゃうみたいですけどどうなるんでしょう。」
「どうなのかな。何もなければいいんだけど。」
「それは無理な気がしてきました。」
谷地の言うのが妥当であろう。