第8章 【獅子の姉、萌える】
とある休日、東京は音駒高校の男子バレーボール部灰羽リエーフ、の姉であるアリサは弟の部屋を訪れていた。
「レーヴォチカー。」
呼びかけて部屋に入ると
「あ、ちょ、姉ちゃんっ。」
勉強机の前に座っている弟の様子が若干おかしい。妙に慌てている。
「なぁにぃ、慌てちゃって。」
慌てる弟の様子に笑いながらアリサはその側に寄る。机の上にはスマホがスタンドに立てられていた。何気なくスマホを覗き込んだ途端にアリサはキュピーンとなる。
「レーヴォチカが女の子とお話してるっ。」
アリサが思わず叫んだ瞬間、
「ふ、ふぎゃああああっ。」
スマホの向こうからも叫び声が上がりそれは更にアリサを高揚させた。
「ふぎゃあってヤダ何この子可愛い、レーヴォチカこの子誰、可愛いっ。」
「姉ちゃんの馬鹿っ、美沙はめっちゃ人見知りなんだぞっ。」
「美沙ちゃんっていうの、可愛いっ。」
「とりあえず姉ちゃん落ち着けってっ、あっ美沙カメラ隠すなっ。」
暴走状態の姉に弟は大変ワタワタしたのだった。
しばらくしてアリサは落ち着いた。
「ごめんなさいね、可愛かったからつい。」
アリサは画面の向こうの細くて地味で髪にリボンをつけているらしき少女に言った。画面の向こうの少女は顔を真っ赤にしてどうぞお構いなくと呟く。
「私レーヴォチカの姉のアリサです、初めまして。」
「レ、レーヴォチカ。」
困惑して疑問形で言う少女にアリサはリエーフの愛称だと教えてやる。
「そ、それは失礼しました。えと、初めまして縁下美沙です。宮城の烏野高校の1年です、よろしくです。兄が男バレにいて弟さんにはお世話になっているっていうかなんていうか。」
「あら、烏野ってレーヴォチカが言ってた小さいけど凄い子がいるっていう。」
「そうそう。こいつ、そこの縁下さんって人の妹なんだよ。スマホとパソに強いから今ビデオ通話のテスト付き合ってもらってんの。」
「そうなのね、ありがとう。」
「いやその別に私は」
縁下美沙は照れてそっぽを向き、アリサはそれも可愛いと思った。