第40章 【トラブルドゥトラベリング】その6
美沙と谷地が部屋に戻ると同室の女子達が先に戻っていた。
同じ1年5組である彼女らとすぐこっちはどこそこに行った、そっちはどうだったかといった話になった訳だが他校と訳のわからない事になっていた美沙と谷地は当たり障りのないように話すのに苦労した。
まさか他校の2年と出くわした、それもうち2人は専門誌に載るレベル且つ女子連中のアイドル的存在な癖に縁下美沙のファン、それが行き過ぎて美沙は写真を撮る時に双子に取り合いされるわ勝手に抱っこされるわ写真を及川に誤送信するわ。
おまけに美沙の義兄が間に2回義妹に電話してきて一悶着あったとあってはなおさらだ。
1年5組の間でも今や縁下兄妹についてはお約束みたいなものがある。何か起きた時渦中に縁下美沙がいれば”また縁下か"となるし、加えて美沙の義兄である力が関わってくると"出たっ"となるのが定番なのだ。
迂闊な事は口に出来ない中で美沙と谷地は何とか会話をしのぎ、何やかんやしているうちに夕食の時間、風呂の時間となった。
梟谷学園高校の白福雪絵には及ばないが見た目に反してやたら食す事でも定評のある縁下美沙が夕食の間他の連中の目なぞどこ吹く風でもぎゅもぎゅしていたのは言うまでもなく、その後は風呂の時間でこれまた谷地と一緒に向かった。
だがしかし2人とも気づいていない、この宿泊先には烏野高校以外の学校も来ていてその中には稲荷崎高校もいたことに。
何も気づいていない美沙と谷地は風呂を終えて談笑しながら部屋に戻ろうとしていた。
一方、稲荷崎高校男子バレーボール部の名物双子はバレーボール部以外の男子と自販機コーナーの前で談笑している所だった。
年頃の高校生らしくわいわいと話している中、ふと宮治があ、と呟く。
どないしたと他の生徒に聞かれる治の目はまったく気づかず笑いながら通り過ぎようとする縁下美沙と谷地仁花の姿を捉えていた。