第7章 【1日遅れのバレンタイン】
「さっすが美沙ちゃん、おにーちゃんの分はどうしたのか知らないけどさ。」
「おんなじのんあげましたよ。」
美沙は本当のことを言った。しかし及川は無駄に察しがいい。
「美沙ちゃんいけないんだー、半分嘘ついてー。」
「岩泉さん、この人どついていいですか。」
「お前じゃ手足届かねーだろ、代わりに俺がやってやる。」
「2人とも酷すぎっ。それよりいいなー縁下君、やっぱずるい。」
「またそれかいな。ほんでどさくさに紛れてまた抱っこせんといてください、ここお外っ、しかも後怖いからやめてっ。」
及川はえー、と不満そうに言った。
「いーじゃん別にバレなきゃ。」
「なんでか知らん兄さんはすぐ感づくからあかんっ。」
「じゃー縁下君に許可取ればいいんだね。」
「毎度毎度あんたはアホかーっ、問題がちゃうわ、だいたい兄さんがそんな許可出す訳ないやろっ。」
「とりあえずそこのクソ及川、セクハラやめろっ。」
そうやって3人はしばらくわあわあやっていた。
及川に散々遊ばれて美沙はいつもより遅く家に帰る。美沙より遅く帰った義兄の力は一見特に怪しんだ様子はないように見えたが
「あんまり遅くまで遊び歩いてるようならお前にかかってる出入り禁止令無視してでもうちの部室に閉じ込めるからな。」
と洒落にならない脅しをかけてきたので美沙は戦慄した。
美沙は知らなかったが別れてから及川と岩泉はこんな話をしていた。
「いつまでにやけてんだ、気持ちわりぃ。」
「んー、だって義理とわかってても嬉しいし。」
「どんだけだ。つかお前もう6番の妹にちょっかいかけるのやめろ、あの兄妹お互い離れる気全くねーだろ。」
「わかってるよ、でも美沙ちゃん弄ると楽しいんだもん。」
岩泉はどうしようもねえ奴だなと呟いた。
【1日遅れのバレンタイン】終わり