第35章 【トラブルドゥトラベリング】その1
あっと美沙が言う間もなかった。
気がつけば義兄がいつもどおり覆いかぶさってきて身動きが取れない。
「もう。」
美沙はやれやれとため息をつく。
「すぐそれでごまかす。」
「そういうお前は大丈夫なのか、修学旅行の間は俺と離れるんだぞ。」
「ずっこい(ずるい)で。」
頬を含ませながら美沙はギュッと自分を抱きしめてくる義兄の腕の中で強引に体の向きを変えた。
耳元で義兄がふふっと笑うのが聞こえる。
「言いながら甘えてくるお前も悪くないかな。」
「もう知らん。」
ブツブツ言いながらも美沙は力に抱きついてその胸に顔を埋(うず)める。
「兄さん、お土産何がええ。」
「ネタに走ってさえなけりゃお前のセンスに任せるよ。」
「うん。」
義兄に頭を撫でられながら美沙は目をつむった。
次章に続く