第35章 【トラブルドゥトラベリング】その1
そしてその日の夜のことだ。
「とにかく現地では気をつけろよまず一人っきりにならないこと、それとどんだけ優しそうでも知らない人にはついていかないように、普段絡まない男子が何かちょっかいかけてきても相手しないで谷地さんや他の誰かと話して、念の為谷地さんには宿泊先で男子が遊びに来ても部屋に入れないようにお願いしてるからああ日向達は例外だけど、というか日向達にもお前のことお願いしているから迷惑かけるなよ、定時連絡も忘れないで朝起きた時と昼飯の時と夜寝る前かな、でも余裕があったら立ち寄った所でもよこして、そうだ一番肝心なんだけど万一知ってる他校の人に出くわしても喧嘩ふっかけられても我慢するように、セクハラされた場合は抵抗していいよそれは当然の権利だから。」
毎度お馴染み縁下家にある縁下美沙の自室で義兄の力が目が滑る長文でくどくど言っている。
聞かされている義妹の美沙はあからさまにブスッとして義兄を見つめていた。
自身も隠れブラコンなどと言われるレベルで義兄を敬愛している身の上であるがいくら何でもこれはない。
しかも親友の谷地他男子排球部の1年連中にも妙な依頼をしているとはどういった事か。
「兄さん」
苦い顔をして美沙は呟いた。
「何(なん)か悪いもんでも食べたん。」
敬愛する義兄にここまで言うのは心苦しいが突っ込みどころが多すぎる。
過保護は前からだが小さい子でもここまで言われるかどうか怪しいレベルで色々言われては敵わない。
「何で。」
しかし義兄はあろうことか笑顔で聞き返してくる。絶対自覚しとう癖にと美沙は思いながら片手をブンブンと高速で振った。
「いやいやいやいやおかしいやろ、小学生の修学旅行でもここまで言われへんで大体やっちゃんらにまで根回ししたて何事木下先輩とか成田先輩は何も言わんかったん。」
「木下と成田には呆れられたし田中にまで過保護って言われたし日向にも突っ込まれたのは確かだな。」
「田中先輩と日向にまでて世も末やんっ。」
「2人が聞いたら発狂しそうだな。」
「今そこちゃうーっ。」
「うるさい、夜中に大声出さない。」
「毎度毎度言うけど誰のせいやーっ。」
「俺のせいって言うのかい。」
「どう考えても兄さんのせぇやしっ。」
「言っても静かにしない奴は実力行使だな。」