第33章 【強引g his way】その4
だがしかし耐性のない大人達はそうもいかない。ただでさえバレーボール関係には縁のない―名前に反して―見た目は大人しい約1名が伊達工の主将と喧嘩する、青葉城西の主将には連れ去られるという異常事態を連続で見せつけられているのに県内最強王者白鳥沢の主将に向かって天然呼ばわりなど頭が追いつかない。
「おおおおおお」
田中冴子は目を丸くしている。
「美沙マジで言ってるっ。」
「な、言ったろ姉ちゃん。」
「おいおい繋心っ。」
ヒィィィッとなっている嶋田が同期に耳打ちをしている。
「マジで縁下の妹何なんだよっ。」
「俺に聞くなっ。」
「天下のウシワカを天然呼ばわり。」
ポツリと呟く滝ノ上のこめかみには汗が浮かんでいる。
「話にはきーてても目(ま)の当たりにした時の破壊力よ。」
「てかいーのかあれっ。」
「いい訳あるかっ、ゴルァ縁下妹っ。」
烏養は怒鳴るが意外にもここで澤村が大丈夫ですと入ってきた。
「相手も相手なんで。」
微笑みながら言う彼も額に汗の粒が浮かんでいた訳だがそれはおいておこう。
烏養はあん、と疑問形で呟いて美沙と牛島、そして義妹の側に控えている力に改めて目をやった。
美沙と牛島と力はなおも会話をしていた。
「俺は天然じゃない。」
「説得力が仕事してへん。」
「何を言っているかわからない。」
「美沙、普通に言いな。」
「説得力があらへん。」
「毎度思うがお前に言われたくはない。」
「その点は俺も同意です。」
「ちょお兄さん。」
「知らない人についてった実績があるだろ、相手が伊達工の茂庭さんじゃなかったらどうなってたか。」
「及川なら目も当てられなかっただろうな。」
「やめたってください。」
「及川さんには先程お会いしました。」
「どうなった。」
「こっちの包囲網をぶち破って美沙に触りに来ました。ついさっき収まったとこです。」
「奴の容態が悪化していないか。」
「俺もそう思います。」
「そこで話は戻るのだが」
牛島は言った。
「何故お前がいる。」
「兄に聞いてください。」
聞かれた美沙は途端に無表情、ちらっと横にいる義兄に目をやるが義兄はしれっといつもどおり人の良い顔をしている。