第32章 【強引g his way】その3
美沙は身を捩(よじ)って自分を拘束している及川の両腕をペシペシ叩き、義兄に助けを求める。
勿論義兄はそれに応えて笑顔でしかし強引に及川の腕をこじあけにかかった。
「ちょっと縁下君痛い痛い痛いっ。」
「俺も及川さんの腕傷つける趣味はないので素直に美沙を離してやってもらえませんか。」
「何でさ、まだいいじゃん。」
「外出るまでにずっと触ってたでしょう、これ以上は勘弁してください。」
「俺の癒やしがチャージされるまで待ってってば。」
「いーやーやー。」
「いつになるやらわかったもんじゃありませんから。」
「成田、どうする。」
「岩泉さんが出ないようなら行こう。」
木下と成田がそんな打ち合わせをしていた時支援は意外な所からきた。
「くぉらああああああああっ。」
田中冴子その人がドドドドドと走ってきた。
「アンタ美沙に何やってんだああああああああっ。」
そんな冴子は今だ美沙を離そうとしない及川のところへやってきて自分よりずっと背丈がある彼にズズイと顔を近づける。
「ねーちゃんよせってっ。」
後ろで弟の龍之介が叫んでいるが効果がない。及川はまさかのスタイル抜群ワイルド系美女に睨まれてタジタジとしている。
「え、えーと」
「そこの田中先輩のお姉さんです、及川さん。」
「ハ、ハジメマシテ。」
「挨拶は後でいーからとにかくアンタ美沙を離しなっ、さっきから嫌がってんでしょっ。」
「は、はいぃぃぃっ。」
さしもの及川もビビったらしい、美沙は投げ出されるように解放され義兄の力は素早く受け止めた。
「大丈夫かい、美沙。」
「もういっつもいっつも何でこないなるんよー。」
「ホント厄介な人に好かれちゃったもんだな。」
「すまねぇ縁下、ねーちゃんいきりたっちまってよ。」
「いや逆に冴子さんのおかげで助かったよ。ありがとうございます。」
「おおきに。」
「いいっていいって。しっかし何とかは何とかより奇なりだねー。」
「全部何とかじゃねえかっ。」
「事実は小説より奇なりのことかな。」