第29章 【コックローチアタック】
「実は」
親友に庇ってもらい安心した山口は事の経緯を話した。
部室に家庭内害虫が出現したこと、奮闘したる後(のち)もしつこく動いた奴にビビった美沙がロッカーにぶつかり荷物が落ちてきた為自分が庇ったこと、そこへ更に顔の近くに家庭内害虫の死骸があった為3度ビビった美沙が悲鳴を上げてしまったこと。
一通り話を聞いた力は落ち着いた。
「ごめんよ山口、変な早とちりして。」
決まりが悪くなった為額に汗が浮かんでいる。
「ありがとう、美沙を守ってくれて。」
「いえ。」
「そんな事だと思いましたよ。」
「悪いな月島、友達疑ったりして。」
力は言って部室に入り、まだ呆けて転がったままの義妹の側にしゃがんだ。
「美沙はほら、いつまでも転がってないで。」
「うう。」
「立てるかい。」
「うん。」
言いながらも何となく足元がおぼつかない義妹、力はそのヒョロヒョロした手を握って立たせてやる。
「すみません皆さん、お騒がせしまして。」
顔を真っ赤にして入り口付近にたまったままだった男子排球部の面々に頭を下げる美沙に主将の澤村大地がまぁまぁと微笑んだ。