第25章 【パニック at the 文化祭 後編 その1】
そこからは勿論本当にパニックである。
「ちょおっ黄金川君ホンマ降ろしてっ、はよーっ(早くーっ)」
「うおっ、わかっ、降ろすから肩ベシベシやめろってっ。」
「ごめんなさいごめんさない美沙さんホントごめんなさいっ。」
「いや作並君は悪ないから私こそごめん人様に見せられるスタイルやないのにホンマごめんっ。」
「俺もそんなつもりじゃなかったんだ許してくれ美沙さんっ。」
作並、縁下美沙、黄金川がお互いわあわあ謝り倒している、これだけでも酷いのにここで3人は急に寒気を感じてブルルッと震えた。
「えとその、兄さん。」
そおっと振り向きながら美沙は呟いた。寒気を感じた時点で察してはいたが案の定義兄の力が目だけ笑っていないおっかない笑顔で近づいてきている。木下がやめろってと言ったり成田が唯でさえ伊達工と青城がいるんだからと止めているというのに全然止まらない。
やがて義兄はピタッと足を止めてえーと、と前置きをした。
「色々言いたい事があるんだけど」
美沙は勿論他からしても怖い以外の何者でもない。
「まずは黄金川君。」
呼ばれた黄金川はハイイィィィィッとやたら姿勢良く気をつけをした。
「いい加減美沙を持ち上げるのはやめてくれ。」
「はいすんませんっ。」
「次に作並君。」
「ハイッ。」
作並もやはりやたら姿勢良く気をつけをした。無理もあるまい。
力はというとそんな作並の肩に両手を置く。軽くホラーとはこのことか。
「とにかくさっき見たのは忘れるように。」
「も、勿論。」
返事をする作並に対し、
「それと」
ここで力はそっと作並だけに聞こえるよう耳打ちをした。
「オカズにしたらマジで許さないからな。」
低く低く囁かれたそれに作並の顔が一気に青くなる。
「しっしませんしません 命に誓ってしませんから許してくださいぃぃぃぃっ。」
とうとう作並は土下座まで始めて伊達工勢は動揺、青城勢はどシスコンの本気を見たと顔を見合わせている。
美沙が絡んだ時限定で冷静さがしばしばどこかへ行く力も流石にここでハッとした。