第24章 【パニック at the 文化祭】中編
そんな小さな騒動があったものの結局何だかんだで烏野高校は文化祭当日を迎えた。
合同でコスプレ喫茶をする1年4組と1年5組、5組の縁下美沙は緊張している。日頃服装にあまり頓着せず女子力何それおいしいの―田中によれば―な奴が義兄の力以外の人にロリータ服を着てメイクをした姿を晒すのである、緊張せずにおられようか。おまけに接客だ、義兄を通じて男子排球部と関わるようになってから他校の連中との関わりが激増した為元来の人見知りは多少ましになったものの不安だらけだ。
それでも試着の時からノリノリだった衣装係にメイクを施してもらい美沙は恐る恐る設営された会場に顔を出した。
美沙が顔を出した瞬間、1-4及び1-5の連中が早速ざわざわした。美沙はうわーやっぱりあかんかったんやどないしょうと勝手に思い込んで動揺しうつむいてキョロキョロするという挙動不審に陥る。だがしかしまず耳に入ったのは女子連中の可愛いーっという声だった。衣装係はともかく他から言われると思っていなかった美沙は顔を上げてキョトンとする他ない。その間にも女子連中はよってきてえマジ可愛い似合ってる縁下さん凄いちょっと写真撮らせてとわいわいしていた。
更によくよく見れば男子連中も美沙を見ていておいあれ何だ、縁下だろ、マジかよ誰かと思った、ヤッベ初めて縁下可愛いって思ったと好き勝手を言っている。
女子連中に写真を撮られまくるという予想外の事態であうあう状態になっている美沙、そこへとうとう谷地、山口、月島もやってきた。
「美沙さんっ、」
真っ先に谷地が言う。
「凄い、めちゃくちゃ可愛いよっ。写真先に見てたけど実物は断然違うねっ。」
「え、あ、せやろか。」
「美沙さん凄く似合ってるよ。」
「おおきに、山口。」
「まぁ馬子にも衣装じゃない。」
月島は例によって馬鹿にしたような口調、美沙はこいつはと一瞬思うがすぐにいや待て月島語やしと思い山口に目をやった。
「ツッキー、今日くらい普通に似合ってるって言ったげたらいいのに。」
苦笑する山口に対し月島は山口うるさいと返す。山口の通訳に少し自信がついてきた美沙が微笑むと月島はそれをちらりと見てすぐにぷいとそっぽを向いたのであった。