第21章 【初めてのアルバイト】完結編
さて伊達工が来た後のまた別の日、またも縁下美沙の勤務先へとある集団が向かっていた。伊達工はでかい奴が多いがこちらも大概だ。しかも約1名バレーボールの専門誌に載るレベルの有名人が混じっている。
「あ、こっちこっちー。」
「何でお前が嬉しそうなんだよ天童。」
「だって面白そうじゃん、あのままコちゃんだよ。」
「俺はそんな喋ってねえからわかんねえっつの。てか未確定じゃなかったのか。」
「いやもう確定だってセミセミ。」
「とりあえずお前そこになおれ、ぶっ飛ばす。」
「俺は賢二郎が来たのが意外だな。」
「どうということはありませんよ、大平さん。工と捨て子の薬丸がもめたら面倒なんで来ただけです。」
「俺はもめてませんっ、あいつが人を脳筋って言うから」
「いちいち電脳って言うからだ馬鹿。」
呆れたように言う白布賢二郎、一方で山形隼人がまーでもと口を挟む。
「一番びっくりなのは若利が来た事だな。」
「あの奇妙な娘であるなら様子を知りたいだけだ。」
「そんなに気に入ってるのか。」
「いや特には。」
「無駄無駄隼人クン、若利クンまーったく自覚ないんだからさっ。」
「兄共々妙な存在だった。その印象が強いだけだ。」
「はいはい。」
「それでも名前は忘れてるんですね。」
ぼそりと言う川西太一に牛島若利はまったく動じた様子もなくああと頷く。
「いやお前な、」
瀬見英太が言った。
「そこ普通に返事するとこじゃねえ。」
「そうか。」
牛島が真面目に返事をした所で一行は縁下美沙の勤務先に到着したのであった。
当の美沙は箒で店先を掃いていてまさか県内最強のバレーボール部が来店するなどと思っていなかった。寧ろここでバイトを始めてから他校の襲撃が相次いでいる為いい加減今日は勘弁してもらいたいと願っている。しかし運命は過酷であった。
「コンチワー。」
少年の声がして掃くのに夢中になっていた美沙はハッとする。
「いらっしゃいませー。」
挨拶したのは良かったが顔を上げた先にあった野郎共を見て美沙はげんなりとした。
「またか。」
もはや叫びたくなる所すらいかない。
「ちょっとお、接客態度が悪いよままコちゃん。」
天童に言われた所で美沙としては言いたくもなるわという話だ。一方白鳥沢の面々は好き勝手に喋り出す。