第21章 【初めてのアルバイト】完結編
「な、何で。」
「早めに終わったからそのまま迎えに来た。」
「まだ終わりまで時間あるで。」
「待っとこうと思って。」
「いやそもそもお迎えいらんて。」
「いつも言ってるだろ、世間が信用出来ないって。案の定変な事になってるし。」
「おい烏野6番、変な事って俺らか。」
「あれがあの子のお兄ちゃん。」
一連の様子を見ていた女川がぼしょりと仲間に向かって疑問形で言った。
「そうみたいですね。」
作並はこめかみに汗を浮かべている。
「今何て言いました、お迎え。」
吹上は首を傾げて小原がうんと続く。
「迎えに来たって言ったな。」
「過保護。」
吹上の正直な感想を他所に美沙は黄金川に持ち上げられたままでおかしいこんなんされるんは私やのうてやっちゃんのポジなはずやとか何でこんな時に限って兄さんが来てまうんやとか考えている。もしこれが谷地だったら固まるか下手したら気絶ものだと思われるがそこまで頭が回っていない。
「おにーさんっ。」
今度は黄金川がでかい声で言う。
「初めまして伊達工の黄金川っすっ。すげーっすねっ、義理の妹さんなのに迎えにまでくるなんてカンドーっすっ。」
「ああうん、ありがとう。」
でかい声で挨拶された力は苦笑しつつも言った。
「それよりうちの美沙を降ろしてくれないか。」
笑顔から醸し出された威圧に黄金川はキョトンとし美沙はやっと地面に足がついたのであった。
「そら見ろめんどーな事になるっつったんだよ。」
二口がブツブツ言う。
「後半はあんたが誘発したようなもんじゃない。」
滑津に突っ込まれると二口はケッと吐き捨てる。
「兄貴まで突撃するなんざ思うかよ、この過保護野郎。」
「うん、余計な事言う人とかいきなり持ち上げる人がいなけりゃこんな苦労はないんだけど。」
「この腹黒野郎。」
さりげなく火花を散らす二口と縁下力に茂庭が気の毒レベルで慌て何か言おうとしたところで二口はしばらく美沙を見つめてくる。何や何やと美沙が身構えていると二口は仲間に言った。
「おらお前ら気が済んだろ、とっとと買い物して帰るぞ。」
キョトンとして見返す美沙に二口はプイッとそっぽを向いた。