第19章 【初めてのアルバイト】中編
という訳で練習を早めに終えた烏野高校男子排球部の面々は縁下美沙のバイト先へとゾロゾロ向かっていた。部活帰りの寄り道といった様子だから通行人からすると特に不審な事はないが約1名ブツブツ言っている少年がいる。
「どうしてこうなったんだ。」
「お前が落ち着きないからだろ。」
美沙の義兄に成田が素早くかつ容赦なく答える。
「まるっきり漫画に出てくるヤバイ親父さんだよなー。」
笑うのは木下、完全に面白がっている。
「誰か美沙さんナンパしてたらどうする。」
「青城の及川を追っかけにして挙句関西にまでファン作ったままコさんですからねえ。」
「月島てめーは火に油を注ぐんじゃねえっ。」
田中が叫ぶももう遅い。縁下力の顔からはたちまちのうちに表情がなくなる。
「縁下さんの雰囲気がヤバイ。」
そう言う日向は顔が青い。
「面白そうだからついてきちゃったけどこれ現地に行ったらどーなるんだろ。」
山口にいたってはプルプルしている。
「ままコって顔アレなのに何でたまにウケるんだ。」
一言多いのは影山で谷地がゲーンッとなり清水になでなでされる。力に聞こえていなかったのは幸いだ。
「なんかもう俺の方が不安になってきた。」
「旭がビビってどーするよ。やー楽しみ楽しみ。」
「スガは程々にしろよ、まったく。」
「何だよそもそも行くかっつったの大地の癖に。」
そうして一行は縁下美沙が働く店に着いたのだった。
何も知らない美沙はのっけから店番を任されてカウンターに座っていた。緊張しているせいで姿勢は無駄にピンとしている。もっぺんちゃんといらっしゃいませ言えるやろかいや言わなあかんのやけどとぐるぐる考えている脳内だが見た目には現れていない辺りが美沙クオリティかもしれない。
とりあえず言えるのは店が昔からといったレトロな外観の為今日日珍しいレベルで地味な美沙は違和感がなかった。しばらくするとまた客が来た。
「いらっしゃいませー。」
ちゃんと言えた。客はこれまた常連のようでおや、ときっちり注目される。おまけに
「あ、ご存知でしたか。」