第17章 【どうしてこうなった】後編
「おい、お前嘘ついてんじゃないか。顔全然似てないしここいらの喋りじゃなかっただろ。」
「溝口君。」
入畑に窘められて溝口はあ、いやすみませんと武田、烏養に視線を走らせながら言うが何分相手はあの縁下美沙だ。
「正確には義理の兄妹です、私養い子なので。」
あっまたあの馬鹿っと烏養が声を上げるももう遅い。溝口があからさまに固まり入畑は微笑んだまま固まる。事情を知っている青城の選手達はというと国見があの嫁と舌打ち、花巻と松川はブブブと笑いを堪え、矢巾と渡はまああの子だしなと苦笑、京谷は特に変化なし、金田一はあの半分ボケェェェと突撃しかねない岩泉を一生懸命抑えていた。こうなるともうどうしようもないからと力も止めなかった為美沙はそのまま話を続ける。
「両親がいなくて育ててくれた祖母も他界しまして身寄りがなくなって親戚内にも引き取り手がなかったのでこの人の家に引き取られたんです。」
相変わらず淡々と語られる事情は意外な所で反応があった。
「うおおおっ。」
温田兼生である。
「苦労してんだなっ及川、お前のアイドルっ。」
まさかの初対面の乱入に美沙は動揺した。
「私アイドルちゃうもんっ。」
言語の切り替えに失敗して関西弁である。
「それに及川さんのでもないので。」
微笑みながら付け足す力は目が笑ってない。これには流石の及川も慌てたらしい。