第15章 【どうしてこうなった】前編
「ままコさんは部員じゃないんだから来たらおかしいデショ。そんな事もわかんないの。」
「何だよ月島そこまで言わなくてもいいだろ、よく一緒だからつい忘れるんじゃん。」
ブーブー言う日向から月島は面倒くさそうに目をそらし大体と今度は美沙に目をやる。
「パソコン部の人がしょっちゅうこっちと一緒ってのもおかしな話だけどね。」
「そない言うたかて。(そうは言っても)。」
「ま、そもそもどっかの誰かさんの過保護が原因な訳だけど。」
「山口通訳っ。」
「ツッキーは美沙さん大変だねって言いたいんだよ。」
「山口うるさい。」
「ま、まあ今回は本当に大丈夫だと思うな。」
ここでマネージャーであり美沙のクラスメイトである谷地仁花が苦笑した。
「及川さんが美沙さんも来いって言わなきゃだけど。」
「堪忍してぇなやっちゃん、これで呼ばれたら私どないしょうもあらへんで。後は」
美沙がチラと義兄を見る。
「何。」
見られた力は微笑むがそれは無意識だったのだろうか。義妹は途端にぎくりとして何でもあらへんとモゴモゴ呟いた。
勿論今回ばかりは力と言えど美沙を青葉城西に連れて行くという事を強行するつもりはない。しかし何故毎度運命はこの義兄妹に過酷なのか。
事は青葉城西との練習試合当日に起きた。
「行ってらっしゃい。」
「行ってきます。」
休日の朝、玄関で兄妹が言葉を交わしている。
「頑張ってな、兄さん。」
「俺は頑張る事ないかもしれないけどな。」
「応援があるやん。それにあったら困るやろけど万が一の交代もあるかもやで。油断いくない。」
「またわざと変な言い回しして、俺の前でウケ狙ってどうする。」
「きっとばあちゃんから受け継いだ何かが。」
「彼岸から怒られても知らないからな。」
「それは兄さんかて一緒やん。」
確かにと苦笑して力は靴紐を結び直す。
「じゃあ本当に行ってきます。」
義父母の目が届かないのを確かめて美沙は立ち上がった義兄にそっと抱きついた。
「甘えたモードはまだ早くないか。」
「そ、そんなモードなんかあらへんもん。」
「はいはい、ツンデレ乙。」
「ふぎゃあ。」
結局美沙はくしゃくしゃと頭を撫でられて流されてしまい義兄はそのまま行ってしまった。