第20章 ・過保護野郎
「何かよくわかんねえけどお前が妹溺愛するレベルに入った事はよくわかった。」
瀬見が言った。
「溺愛だと。」
若利は問う。
「そんなはずはない。」
「ここまで来ると天然ボケじゃなくて天然記念物ですね。」
さらりとしかし容赦なく白布が言った。
「まあいいです、仲違いしてほしい訳でもないので。いちいち連絡させるのはどうも解せませんが。」
「無事か否かを知っておきたい。少しわかってきた。あれは気をつけないとすぐ抱え込む。言えと言いつづけておかなければ危険だ。」
チームの連中は顔を見合わせ、大平が涙ぐむ。
「若利、成長したな。」
「親戚かお前は。」
「あ、英太クンに先越された。チョット誰か獅音にティッシュかハンカチ渡したげて。」
「俺ハンカチ持ってますっ。大平さん、どうぞ。」
「ありがとう。」
「山形さん、今度こそケータイ置き忘れ出来ませんね。妹巻き込んだらきっと命の危機に。」
「やめろ太一、思い出させるな。」
「ああもう面倒くさい。」
最後に白布が呟く中、五色が若利に言った。
「牛島さん、文緒が好きになったんですかっ。」
いきなり聞く奴があるか。しかし五色ではどうしようもない。若利は口を開く。わからんと言おうとした口の動きだったがそれは一瞬のうちに切り替わった。
「そうかもしれない。」
チームの連中は—白布ですら—目を丸くする。
「だが溺愛でもなければ過保護でもない。」
「まだ言うかこの野郎。」
瀬見がそろそろ蹴るぞと言いたげに呟いた。
次章に続く