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【ハイキュー】ウシワカイモウト

第15章 ・無自覚に縮まる距離


とは言うものの、部活が終わって帰宅している間に若利はまた何やらよくわからないモヤモヤがぶり返していた。とりあえず頭にあったのは文緒に言ってやらねばならないという事でおかげで文緒は理解が追いつかない目に遭う。

何も知らない文緒はいつものように帰ってきた義兄を出迎えた。

「おかえりなさい、兄様。」
「ああ。」

若利は呟き、しかしズボンのポケットをゴソゴソする。どうしたのかと文緒が思っていたら若利のでかい手が目の前に突き出されしかもその上に見覚えのあるものが乗っかっている。

「あっ。」

文緒は思わず声を上げた。無くしたと思っていたストラップの飾りだ。出てこないと思っていたので文緒はついつい顔が緩む。

「ありがとうございます、兄様が拾ってくださったのですか。」

そっと受け取りながら尋ねるも若利は何だか機嫌が悪い。

「俺は預かってきただけだ。」
「どなたから。」

義兄はますます機嫌が悪くなった。おそらく他人からはわかりづらいがすぐ側にいる文緒には何となくわかる。

「烏野の、ヒナタショウヨウ。」

若利にしては歯切れが悪い。

「日向が拾ってくれたんだ。お礼を言いに行きたいところですね。」
「行かなくていい。」

高速で被せ気味に言う若利に文緒は疑問形ではい、と言う。若利の眉根がかなり寄っていた。

「兄様、どうなさいました。」
「どうもしない。」

流石の文緒も嘘だと思った。今日の若利は何だかおかしい。機嫌が悪いのは確かなので文緒はそれ以上踏み込まず、とりあえず2人は夕食を共にした。

勿論夕食が終わって片付けも一段落したところで文緒は若利の部屋に呼ばれた。これまたいつものように若利から少し離れた所に正座する。まずは聞きたい事があった。

「日向や影山君は兄様とお知り合いだったのですか。」

若利はすぐに答えない。僅かの間だが不安に思っていると若利は重々しく言った。

「おかしな速攻を使う1年が烏野にいるという話は聞いていた。」
「結構有名なのですね。」
「どうという事はない。」
「兄様らしいですね。」
「通りすがりに少し話した事がある。親しくはない。」
「そうでしたか。」
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