第7章 ・若利は怒力する
瀬見から突っ込まれ大平にも忠告された若利は一応の努力をしてみることにした。何やらよくわからないが仲間達は自分が文緒をちゃんと見ていないという。確かに文緒は何かと自分と話しかけたり後をついてきたりするがそれが何故なのか深く考えた事がなかった。しかし大平にまで関心を持てと言われたという事は状況が深刻であると若利は判断した。
ともあれ仲間の話を総合するにもっと文緒と話をしろという事らしい。そこで若利は考えた。いつも通りだとまた同じ事を繰り返す事になりそうだ。なのでまず話をする為の状況を作る事から始めたのである。
その日帰宅してから文緒が迎えに出て夕飯を一緒に食した。ここまでは一緒だが、
「文緒。」
ここからは若利として初めの試みだ。
「はい、兄様。」
そういえばこいつは何で自分を兄様と呼ぶのかと若利は今更考える。
「食事が終わったら少し俺の部屋に寄れ。」
文緒はキョトンとしたが、すぐにはいと返事をした。
夕飯を終えると文緒はトテトテと若利の後をついてきた。体格のせいもあるだろうが若利は幼い子供がついてきているような心持ちがする。そうやって自室に連れて行くと文緒はそろりと若利の前に正座した。
「何でしょう、兄様。」
不安そうな顔、怯えているのか。
「文緒。」
「はい。」
「お前は何故俺の側にいたがる。」
文緒が体を震わせて俯く。
「目障りなのならやめます。」
「そうではない。」
若利は内心困ってしまった。この義妹は過剰反応をしている。若利の言い方に問題があるからだが自覚がないものはどうしようもなかった。
「いるのは構わない。ただ知りたい。」
「具体的に言うのは大変難しいです。ただそうしたいと思いました、初めてお会いした時から。」
「まったくわからない。」
「申し訳ありません。」
しょぼくれ更に俯く文緒、別にそうさせたい訳ではないのに若利は更に困惑する。