第47章 ・はしゃぐ義妹
いちいち言うまでもないが、夕飯の後文緒は若利の膝に乗っかっていた。もはやいいのか悪いのかの議論はいらないかもしれない。
「それで兄様、その人は結構色々SNS に投稿されているようでして。」
「そうか。」
「ライトノベルに当たる感じなのですが」
「どういうものかわからない。」
「名前のとおり小説の中でも軽い読み物です。乱暴な表現かもしれませんが漫画に近い感じです。ラノベと略されることもあります。」
「そうか。お前は読むのか。」
「図書館から借りたことが何度か。でも母に見つからないようにしていました。」
「何故だ。」
「漫画のようなものを持ち込んでと嫌な顔をされるので。」
「死者を冒涜(ぼうとく)するつもりはないが過保護だな。14、5もなれば善悪の判断はつくだろう。まして相手がお前なら。」
「兄様、その台詞はご自身に刺さりますよ。」
「何故だ。」
「先日までお仲間に私への過保護がひどいと言われてたのはどなたですか。」
「俺だ。」
ここで若利ははたと考えたような雰囲気を醸す。
「これは俗に言うブーメランと言うやつか。」
「そのとおりですがどなたです、兄様にそんなことを教えたのは。」
「天童。」
「予想通りですね、また瀬見さんに叱っていただきましょう。」
「何か問題があるのか。」
「兄様がすぐ鵜呑みにして何も考えずに使われることがなければ気にしませんが。」
「よくわからないが釈然としない。」
「兄様は純粋培養に近いということです。」
「お前に言われるのは心外だ。」
「まあ何て事。」
文緒はぷぅと膨れるがそれを見た若利がやはり縞栗鼠を連想していた事は知らない。
「いずれにせよお前が早くも文芸部で楽しんでいることはよくわかった。」
若利は呟いてぎゅうと文緒を抱きしめてくる。
「どうされました、急に。」
「はしゃいでいるお前も悪くない。」
「そうですか。」
文緒もそんな義兄にしがみつく。
「兄様がそう思ってくださるなら何よりです。」
満足そうに呟いて文緒は目を閉じた。そのまま妙に静かになったので若利がおやと思って見てみると義妹はすうすうと寝息を立てている。
文緒は知らない、そのまま自分を抱き上げて部屋に運ぶ義兄の顔が微かに笑っていた事を。
次章に続く