第45章 ・義妹の反抗 その3
実質文緒と喧嘩状態の牛島若利、顔にこそあまり浮かばないが滅多に反抗しない義妹に楯突かれて大変に機嫌が悪い。練習中にその影響が出ないのは大したものであるが終わってからはやはり機嫌が悪いオーラを放っていた。
「おいどーするよ、あれ。」
ムスッとしている若利の後ろで山形がコソコソと仲間に言う。
「案の定機嫌悪いままですね。」
ポツリと呟くのは川西である。
「ほっといたらいいんでない、そのうちどっちかが折れるでしょ。」
ヘラッとして言うのは天童で横にいる瀬見がいやいやと片手をパタパタさせる。
「文緒は折れない方がいい、でないと若利が一生文緒を閉じ込めかねない。」
「嫁への偏愛ぶりが著しいですからね。」
静かに言う白布に大平がああもうと溜息をつく。
「文緒さんは気の毒だし若利が心配するのもわかるし困ったもんだな。」
「文緒は天然ですからねっ。」
五色が言うのはもっともだがこいつの場合も"お前が言うな"である。
「で、話戻ってマジどうする。やっぱ放置か。」
山形が言うと野郎共はうーんと唸ってしまいそのまましばし沈黙が流れた。若利は依然機嫌悪い空気を隠さないまま着替えていて、仲間達が後ろで密かにやり取りしている事に全く気づいていない。
「ほっときゃいいでしょ。」
そんな中沈黙を破ったのは意外にも白布だった。瀬見がぎょっとしてそんな後輩を見つめるが当の白布は流している。
「ただし、嫁の方にはこのままあっさり折れないよう言っておく必要がありますね。」
「白布さんが文緒の味方したっ。」
驚く五色を白布は睨む。