第44章 ・義妹の反抗 その2
というわけで3年のフロアでとんでもなく恥ずかしい目に遭った牛島文緒はバタバタと1-4の教室へ向かう。幸いギリギリ間に合い、まだ次の授業の教科担当も来ていない。
「何だお前どうした、随分ギリギリじゃん。」
隣の席の五色が不思議がり、文緒は珍しく突っ込んでいく勢いで五色に訴えた。
「聞いて五色君、兄様がひどいのっ。」
「どうひどいんだ。」
「また練習終わるまで待ってろってっ。」
「え。」
「前に過保護とか何とか言われてやめたのにこれじゃ逆戻りだよ。」
「そ、そーだな。」
「しかも恥ずかしいしやり過ぎだし嫌だって言っても聞いてくれないしいくら何でも横暴。」
わあわあ言う牛島文緒が珍しい上、内容が内容の為に周りで聞こえていた連中は笑いを堪えている。
「何か大変なのはわかった。」
一方気圧された風に五色が言う。
「でもお前今日どーすんだ。」
「どーするも何も」
ぷうと膨れて文緒は言った。
「絶対待たない。学校での用事終わったらすぐ帰る。」
「喧嘩になんねーか。」
「もうなってる。」
「なってんのかよっ。」
「それにここで折れたら私ずっと兄様に拘束される。そんなのさすがに嫌。」
「ま、まあ頑張れ。」
流石の五色もそう言うしかなかったらしい。文緒はなおもプンスカしたまま教科担当が来て授業が始まる。
流石に三年生が見ている中で義兄に抱き上げられたことを口にしなかった辺りは偉かった—本来当たり前だが—と言えよう。
そうして放課後である。委員会の仕事もなく部活もやっていない文緒は五色にも言った通り若利を待たずにとっとと下駄箱に向かった。しかし3年のフロアで義兄と言い合い義兄もやらかしてくれた影響が早速現れることとなる。
何が起きたかというと通りすがりに聞き捨てならない事を吐いた奴がいた。言うに事欠いて、おーい嫁ー先帰ったら旦那に怒られるぞー、と言ったのだ。文緒は思わず叫んだ。
「嫁じゃありませんっ。」
言うと嘘つけーと言われた。どう見ても牛島は嫁扱いしているというのである。
「何て事。」
文緒は頭を抱える。確かに踏み越えた仲ではあるが限られた以外には言えない。