第41章 ・迷子札あるいは首輪
「とりあえずな、若利。」
一通り回想して瀬見は言った。
「お前どんだけ文緒の所有権主張したい訳。んなことしなくてもあいつがお前置いてどっか行くかよ。」
「文緒は大丈夫だろうが俺の気持ちの問題だ。」
「若利の癖に気持ちの問題とか言い出した。」
「そこはよくわからないがとにかく問題は他校の奴だ。」
「及川辺りにかっさらわれるって思ってんのか。」
「あいつはあり得ない。絶対にだ。」
「若利が怒ってるぞ。」
「めっずらしー、隼人君写真撮っちゃえ。」
「俺だって命が惜しいわ、馬鹿。」
「つまんねえの。」
「何なんですこの流れ。」
白布がうんざりしたような顔をする。
「大平さんも止めてください。あの嫁が絡むとすぐこれだ。」
「と言うより賢二郎もとうとう嫁認定なんだな。」
大平が白布に言う一方、五色が牛島さんっとでかい声で若利に言った。
「結局首輪つけるくらい文緒が好きになったんですかっ。」
「何でお前はそーゆー事をでかい声で聞くかな。」
後輩をぶっ飛ばしに行きかねない瀬見を川西が抑えるが五色はその状況を理解しておらず、やはりと言うべきか若利は何も考えずに答えた。
「そうだ。」
主将の爆弾発言はたちまちのうちに部室内を沈黙させた。
「おい、うちのエースになる奴ってこんなんばっかりか。」
「俺に聞かないでください山形さん、いずれにせよ2人とも処置なしです。」
「こうなったらいっその事文緒ちゃん呼んでこようよ、誰か1-4行ってきてー。」
「天童、馬鹿言うんじゃないよ。」
「つまんね。」
何も知らない文緒は掃除当番を終えて瀬見が言う所の迷子札または五色が言う所の首輪をつけたまま1人下校しようとしていた。
次章に続く