第6章 ・大平獅音は心配する
ぶっちゃけ言うとバレー部副主将の大平獅音は心配していた。
というのもエースである牛島若利に義妹が出来た—しかも同じ学校に編入している—のだがチームメイトからチラホラと若利が妹をちゃんと見てやってない、それで妹が悩んでるらしいという話が挙がってくるのである。
他人事ながらどうにも不安になった大平はとある部活の日、若利に尋ねた。
「若利、妹になった子とはどうだ。」
「どうとは。」
「仲良く出来そうか。」
ところが若利は言うに事欠いてこう言った。
「わからない。」
大平ははたから見れば気の毒なレベルで動揺した。
「わからないてどういう事。」
「あれがどういう奴かがよくわからない。」
「話さないのか。」
「向こうからは話してくる。」
「どういう子なのか気にならないのか。」
「とりあえず極端に非常識でないなら問題ない。」
あ、こりゃ駄目だと大平は思った。
「ちょっとちょっと若利、いくら何でももうちょい妹の事に関心持ちなさいよ。」
「瀬見にも言われたがどういう事かがよくわからなかった。」
大平はため息をつく。
「あんまり外野がベラベラ喋るもんじゃないと控えてたけど流石に言うね。」
首を傾げる若利に大平は言った。
「文緒さん、お前が自分の事を嫌いなのかそうじゃないのかわからなくて困っているらしいよ。瀬見が言ってたし天童も文緒さんから若利とまともに話してないって事聞いたってさ。」
「何故あいつが困る。」
流石の大平も誰かこいつ何とかしてくれと思う。瀬見あたりならキレているかもしれない。
「そりゃお前と仲良くなりたいからでしょ、せっかく兄妹になるのなら。」
「それでやっとわかった。」
「何が。」
「文緒がやたら俺の側にいたがっている気はしていたが何故かがわからなかった。」
なるほどこれはひどいと大平は思わざるを得ない。しかしこれでは終わらないのが若利クオリティである。
「しかしそれで文緒がどう困るのだ。」
瀬見が聞いたら暴れるかもしれない。大平は頭を抱えたい心境になった。