第40章 ・【外伝】 女神と天使と天然お嬢様
「何で牛島さんが放置してるのか何となく見当つくけど。」
「わかるんスか、縁下さん。」
尋ねる影山に縁下は多分だけどと前置きして答えた。
「そうしときゃ他の奴が妹に手を出しにくいって思ってるんじゃないかな。」
「ん、てゆーかさ」
「木下、その先は言うなよ。」
「ウシワカはマジで嫁にする気じゃねーの。」
「何で言っちゃったのっ。」
縁下が叫ぶが木下に限らず人の口に戸は立てられない。
「ぐおおおおおおっ、ウシワカ許すまじぃぃぃぃっ。」
「おうよ龍っ、許せねえよなっ。」
田中と西谷がわめき出し、ほら始まったと縁下は片手で顔を覆った。
「で、何がどう許せない訳。」
言う縁下の口調は聞くまでもないと思うけどと言わんばかりだ。
「決まってんだろ力っ、早々と嫁もらってんのが腹立つっ。」
「まだ嫁じゃないから、多分。」
「どうせ決定だろーがっ。」
「別にお前らの好みでもないだろ。」
「それは関係なくとにかく腹立つっ。」
「田中も訳わかんないから。木下、反省したか。」
「マジでわりぃ、ここまでになるとは思わなかった。」
「清水先輩、」
「深く考えちゃダメよ、仁花ちゃん。」
「うう。それより文緒さんて本当に大事にされてる感じでしたね。あのウシワカさんがそこまでって何か意外。」
「そうね、そのうちウシワカが文緒ちゃんに自分のだって名前シール貼ったりして。」
「アハハ、まさか。」
珍しく冗談を言う清水に笑う谷地、だが恐ろしい事にそのまさかに近いネタが上がっていた。
「兄様、私は犬ではありません。」
「では猫か。」
「それも違います。」
「確かにもっと小さい生き物に見える。」
「動物から離れてくださいな。そもそもどなたです、私にドッグタグでもつけろと兄様に吹き込んだのは。」
「天童だ。」
「明日天童さんとこのクラスに行ってまいります。油断も隙もありません。」
「何を怒っている。」
「うかうか鵜呑みになさる兄様とそれをわかってておちょくった天童さんに怒っています。」
「ではどうすればお前は俺の物だと示せる。」
「そこまでなさらずとも兄様。」
「瀬見に聞くのが確実か。」
「どうか聞かないであげてください、兄様。」
「そういうものか。」
「そういうものです。」
次章に続く