第39章 ・牛島兄妹、留守番をする 終
そろそろ母と祖母が帰ってくる日が迫ってくる。その間も若利と文緒の義兄妹は2人で家を守っていて、多分チームの連中もあまり見ないような若利の姿が散見された。
例えばこんな風だ。
「夕飯の支度か。」
「はい、兄様。」
「手伝いたいが俺はどうすればいい。」
「お皿を出してくださいな、後はお箸とかお箸置きとか。」
「わかった。」
「どうされました、珍しく固まって。」
「場所がわからない。」
「お皿はそこでお箸とお箸置きはその引き出しです。」
「ああ。茶碗は。」
「そこです。」
「湯のみはどこだったか。」
「その棚です。」
「思うのだが」
「はい。」
「これは手伝っていると言えるのか。聞いてばかりで効率が悪い気がする。」
「これも訓練です、兄様。これを機会に家の事に慣れてくださいな。」
「そうか。」
あるいは若利もいた休日に洗濯物を干す一幕もあった。
「よいしょと。」
「洗濯物か。」
「はい。」
「脚立から降りろ。」
「え。」
「一番上の竿には俺が干す。」
「大丈夫です、量はしれてますし。」
「口答えをするな。お前が無理をして落ちる方が困る。」
「ありがとうございます、兄様。」
「どれからやればいい。」
「そこの籠のバスタオルからお願いします。」
「わかった。」
そうかと思えばこんな事もある。
「いけない、新聞を取ってくるのを忘れました。」
「夕刊か。」
「はい。取ってきます。」
「俺が行く。」
「え。」
「もう暗い。」
「お家の敷地内ですよ、兄様。」
「お前はそこにいろ。」
「は、はい。」
更には若利が文緒の部屋で一緒にパソコンでDVDを見ている時もあった。勿論というべきか文緒は若利の膝に乗っけられている。
「これは何だ。」
「イギリスのクレイアニメです、兄様。」
「クレイアニメ。」
「簡単にいうと粘土で作ったものを一コマ一コマ動かしては撮影して繋げて作る映像です。」
「細かい事はわからないが手間がかかりそうだな。」
「私も聞いた話ですがそれはもう相当のものだそうです。背景の小物まで含めたらどうなるかと思うとゾッとします。あ、この作品はメイキング映像もありますよ。」
「そうか。」
「どうされました。」